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現実脱出論 - 書評

まずは、現実に自分の体を合わせるのではなく、自分自身の思考をちゃんと中心に置くことだ。現実という他者に合わせて生きるのではなく、自分が捉えている世界を第一に据えよう。

正しすぎる感。


ベストセラーとなった『独立国家のつくりかた』から2年、坂口恭平さんの最新作の「現実脱出論」を読んだ。現実を現実"さん"と擬人化し、どうやったら現実から抜け出せるか、そもそも現実に付き合う必要はあるのか、世界に対して問い続ける著者らしい本書。
以下、amazonから引用。

内容紹介
目に映っている現実は、決して唯一無二の世界じゃない!

目で見ることも、手で触れることもできないけれど、
たしかに存在するあの〈懐かしい世界〉へ読者を誘う

ベストセラー『独立国家のつくりかた』で〈社会〉と対峙した坂口恭平が、
今度は私たちの〈無意識〉にダイブする!

 

パンチライン(特に気に入った所)

誤解や勘違いを自ら作り出す

こういった誤解や勘違いは、現実という世界で生きていくには障害となったり、変な目で見られがちだが、僕はとても大事なエクササイズだと思っている。むしろ、自ら作りだそうと日々試みているくらいだ。

自分を諦める

そこで、僕は自分の子のコントロール不能な状態を回避するために、家訓を上手く実践できるように、あることを諦めた。「自分自身の思考が常に正しい」と思うことを諦めたのだ。

現実脱出のヒント

できるだけ1人で行動する。できるだけ朝早く行動する。できるだけ平日、人が会社で働いて町を歩いていない時に動く。つまり、人の意識が集中していない時空間を、現実の中で探し出す。こういうところにも現実脱出のヒントは転がっている。

感情は機械であり、自分は異邦人、旅行者

これは何も躁うつ病に限らない。さまざまな障害、病気、症状など、病だけでなく、現実と折り合いをつけることが出来ないと思っている人は誰しも現実という世界に降り立った旅行者だ。そんな人が、自分が旅行者だと認識しないままに生活を送れば、大変なのは当たり前である。
そういう時は、まず、自分が一番隠したい、恥ずかしい、困っていると思っていることを、機械と捉える。これは、自分が現実世界の異邦人であると認識するためのパスポートなのだ。

振る舞いこそが言語

むしろ、振る舞いこそが、人だけが持っている本来の言語なのかもしれない。動物を見ていると、それはとても納得のいく考え方に思える。言語の前に、まずは振る舞いがあるのだ。だから執筆している時、僕はいつも確信を持って、貧乏揺すりをしている。

家の中でピクニック

家の中でピクニックをすればいいのだ。今すぐ起き上がって布団をたたみ、和室であるこの寝室に愛用している赤色のセサミストリートの柄が描かれたビニールシートを敷いて、その上に座って朝食を食べるというのはどうか。

 

感想

坂口さんは現実脱出のヒントをくれる。
誰にでも経験はあるだろうけど、秘密基地を作って、自分の本当の家とは”別の”家を作る。確かにそういう瞬間って世界が変わったような、見ている風景が変わったような気がしてたな。実際の風景は変わってないんだけど、自分が感じる風景は確実に変化していた。坂口さんの言葉で言うと、匂いが変わった、かな。
今でもちょっとしたキッカケで駅から家までの帰り道を普段と違う道で帰ったりして、普段と違う風景にちょっと楽しくなったり。

現実は辛い。真っ向から現実とぶつかるのは正直しんどい。まともに対峙してもどうにもならない、自分が疲弊していくだけなんだし、現実の認識を変えたり、現実との付き合い方を変えてみる。その試行錯誤が大事。

「独立国家のつくりかた」からそうだけど、坂口さんはライフハックを地で行くスタイル。
本物のライフハックを感じたい方は是非読んでみてください。